next up previous contents index
Next: 関連文献 Up: OpenMX Ver. 3.9 ユーザーマニュアル Previous: Contents   Contents   Index

OpenMXについて

OpenMX(Open source package for Material eXplorer)は密度汎関数理論(DFT)[1]、 ノルム保存型擬ポテンシャル[32,33,34,35,36]および擬原子基底関数[41]に基づき、 原子レベルから物質の第一原理シミュレーションを実行するためのソフトウェア・パッケージです。 OpenMXで用いられている計算手法、アルゴリズム、またそのプログラム上での実装は並列コンピュータ上でのMPI並列や OpenMP/MPIハイブリッド並列による大規模第一原理電子状態計算を実現するために、入念に設計されています。 OpenMXにおいて実現されたDFTの効率的な実装により、固体、表面、界面、液体、そして低次元物質などの幅広い物質の 電子構造、磁気構造、また幾何構造を第一原理的に計算することが可能です。 数百コアを有する並列コンピュータを使用することにより、1000個の原子で構成される系を通常の対角化手法を用いて扱うことができます。 さらに数千CPUのコアを有する並列コンピュータを使用すれば、一万個以上の原子から構成される系の第一原理による電子状態計算さえも、OpenMXに実装されているO($N$)法を用いて実行可能です。 多くの元素に対して最適化された擬ポテンシャルおよび基底関数がデータベースとして整備されており、またその精度はベンチマーク計算に よって検証されています。そのためユーザは自分でこれらのデータを準備する必要がなく、速やかに各自のシミュレーションを開始することができます。 OpenMXには磁気特性、誘電特性、電気伝導特性、反応エネルギー障壁などの様々な物理的・化学的特性を計算するための機能が実装されており、 量子力学の第一原理からナノスケールの物質群を深く理解するための強力なツールとして、幅広い活用が 期待されます。 これまでの応用計算の事例はOpenMXのWebサイト(http://www.openmx.-square.org/)に記載されていますので、参考にして下さい。 OpenMXの開発は、2000年に尾崎グループにより開始され、その後、本マニュアルの冒頭のリストに挙げられている数多くの開発者が 本オープンソースパッケージの開発に貢献してきました。 プログラム・パッケージとソースコードはGNU General Public License version 3 (GPLv3) [102]に準じて配布されており、 OpenMXのWebサイトからダウンロードすることができます。

OpenMX Ver. 3.9 の特徴と機能は以下のようになります。

コリニアDFT法ではスカラー相対論的擬ポテンシャルが、またノンコリニアDFT法では完全相対論的擬ポテンシャルが 利用可能です。 またスピンおよび軌道磁気モーメントを制御するために制限ノンコリニアDFT法が実装されています。 これらの手法は複雑なノンコリニア磁気構造やスピン軌道相互作用を調べるのに役に立ちます。 通常の対角化による計算は、数千コアまでの並列化が実現できるELPAに基づく並列固有値ソルバ [39]及びScaLAPACKによって行われます。 この機能により、通常の対角化法を用いて1000個の原子からなる系の計算が可能になります。 この高並列化対角化手法によってクラスタ、分子、スラブおよび固体に対する大規模計算が可能ですが、線形スケーリング法および 低次スケーリング法も固有値ソルバとして利用可能です。これらの低次スケーリング法に対しては計算精度と計算効率に対して 注意深い検討を行うことで、1万原子を越える系をも取り扱うことが可能です。 結晶格子可変の構造最適化やバンドアンフォールディング法も有用な機能です。 またOpenMX Ver. 3.9の重要な新機能として、分割統治法と局在自然軌道に基づく新しいO($N$)法と X線光電子分光法(XPS)で観測される内殻電子束縛エネルギーの絶対値計算が挙げられます。 OpenMXの開発は継続して行われています。本オープンソースコードの発展に寄与して頂ける開発者の方のご参加を歓迎致します。