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DFT-D3法

GrimmeらによるDFT-D3法 [136,137] によりvdW相互作用を取り入れることが可能です。 関連パラメータは以下となります(デフォルトのパラメータはGGA-PBE用のものが設定されています)。

  scf.dftD                     on            # on|off, default=off
  version.dftD                  3            # 2|3, default=2
  DFTD3.damp                   bj            # zero|bj, default=bj
  DFTD.Unit                    AU            # Ang|AU
  DFTD.rcut_dftD            100.0            # default=100 (DFTD.Unit)
  DFTD.cncut_dftD              40            # default=40 (DFTD.Unit)
  DFTD.IntDirection         1 1 1            # default=1 1 1 (1:on 0:off)
DFT-D2もしくはDFT-D3計算を実施する際には「scf.dftD」を「on」にします。 DFT-D2では、「version.dftD」を「2」とし、DFT-D3では「3」として下さい。 DFT-D3の減衰関数としてゼロ及びBecke-Johnson(BJ)[137]の双方が使用可能です。 相互作用のカットオフ半径は「DFTD.rcut_dftD」で指定し、配位数の計算に用いるカットオフは「DFTD.cncut_dftD」です。 「DFTD.Unit」で指定する単位はAUを推奨しています。 「DFTD.IntDirection」では、abc軸方向の仮想原子との相互作用を加味するか否かを指定し、 「1」の場合には加味し、「0」の場合には無視します。 各原子の周期性の制御は、DFT-D2法と同様に以下の様にで行います。
  <DFTD.periodicity 
   1   1
   2   1
   3   1
   4   1
   ....
  DFTD.periodicity>
ここで第1列は「Atoms.SpeciesAndCoordinates」と同様の通し番号、第2列はフラグで、対応する原子に対して「1」は周期的、 「0」は非周期的であることを意味します。 「0」を指定した原子は非周期的であると見なされ、周期セルとの相互作用は含まれません。

DFT-D3法のための主要な改変は、「DFTD3vdW_init.c」と「Total_Energy.c」内の「Calc_EdftD()」のみとなっています。 「DFTD3vdW_init.c」において、vdW相互作用パラメータを変更することが可能です。 また、「Total_Energy.c」内の「Calc_EdftD()」を見ることで、どの様にエネルギーが計算されているか確認することができます。

その他の汎関数を使用する際には、以下のキーワードを設定して下さい。

  DFTD.scale6            1     # default=0.75|1.0 (for DFT-D2|DFT-D3)
  DFTD.scale8       0.7875     # default=0.722|0.7875 (for PBE with zero|bj damping)
  DFTD.sr6           1.217     # default=1.217 (for PBE)
  DFTD.a1           0.4289     # default=0.4289 (for PBE)
  DFTD.a2           4.4407     # default=4.4407 (for PBE)
$s_{6}$」 と 「$s_{8}$」はGrimmeの論文 [136] 中の式(3)に含まれるスケーリングファクターであり、 「DFTD.scale6」 と 「DFTD.scale8」 にて指定します。 このスケーリングファクターは汎関数と減衰関数に依存して変わります。 また、ゼロ減衰関数を用いる場合には「sr6」、BJ減衰関数を用いる場合には「a1」と「a2」を設定する必要があります。 これらのパラメータはGrimmeの論文の式 (6)に含まれるものです。

DFT-D3計算の例として、2つのベンゼン分子(平行に配置、$D_{6h}$対称)間の相互作用を、 2分子間の距離の関数として計算したものを図 60 に示します。 計算に用いた以下の入力ファイルは「work/DFT-D3」ディレクトリに収められています。

  Dimer-Ben-10.0.dat  Dimer-Ben-3.88.dat  Dimer-Ben-4.5.dat  Mono-Ben-1.dat
  Dimer-Ben-3.3.dat   Dimer-Ben-3.89.dat  Dimer-Ben-5.0.dat  Mono-Ben-2.dat
  Dimer-Ben-3.4.dat   Dimer-Ben-3.8.dat   Dimer-Ben-6.0.dat  Mono-Ben.dat
  Dimer-Ben-3.6.dat   Dimer-Ben-3.9.dat   Dimer-Ben-7.0.dat
  Dimer-Ben-3.86.dat  Dimer-Ben-4.0.dat   Dimer-Ben-8.0.dat
  Dimer-Ben-3.87.dat  Dimer-Ben-4.2.dat   Dimer-Ben-9.0.dat
1分子を「Mono-Ben.dat」を用いて最適化した後、2分子間の距離を変えた計算を 「Dimer-Ben-#.dat (#=3.3-9.0)」を用いて実施しました。 その際、ベンゼンの構造は1分子で最適化した構造に固定しています。 「Mono-Ben-1.dat」及び「Mono-Ben-2.dat」では、1分子の計算を counterpoise補正を行ったものになっています。 最も安定な分子間距離が3.87Åとして得られており、これはDensity fitted local second-order Møller Plesset perturbation theory (DF-LMP2) [138]による結果(3.89 Å)とよく一致しています。 counterpoise補正を加えた相互作用エネルギーは 1.73 kcal/mol となっており、こちらも文献値(1.7 kcal/mol)[138] とよく一致し、基底関数重なり誤差が無視できないものであることが分かります。


Figure 60: 平行に並んだベンゼン($D_{6h}$対称性)二量体における分子間の相互作用エネルギー。 counterpoise補正を加えた相互作用エネルギーを三角で示す。 計算に用いた入力ファイルは、全て「work/DFT-D3」ディレクトリに収められている。
\includegraphics[width=12.0cm]{D6h-Benzene-Dimer.eps}