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バイアス電圧効果の補間法

大規模な系のSCF計算を各バイアス電圧において実行するのは非常に計算時間を要します。 バイアス電圧効果の補間法を用いてNEGF法による計算コストを低減することが可能です。 次の手順により補間を行います。 (i) 対象とするバイアス電圧領域から選択した2、3のバイアス電圧についてのSCF計算。 (ii) 透過率および電流を計算するとき、中心散乱領域と右側電極部分に対するハミルトニアンのブロック要素、 $H_{\sigma,C}^{(\bf k)}$ $H_{\sigma,R}^{(\bf k)}$、さらに化学ポテンシャル$\mu_{R}$について 次のような線形補間を行います。

$\displaystyle H_{\sigma,C}^{(\bf k)}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \lambda H_{\sigma,C}^{({\bf k},1)}
+ (1-\lambda) H_{\sigma,C}^{({\bf k},2)},$  
$\displaystyle H_{\sigma,R}^{(\bf k)}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \lambda H_{\sigma,R}^{({\bf k},1)}
+ (1-\lambda) H_{\sigma,R}^{({\bf k},2)},$  
$\displaystyle \mu_{R}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \lambda \mu_{R}^{(1)} + (1-\lambda) \mu_{R}^{(2)},$  

ここで、上付きの添字$1$および$2$は、事前にSCF計算を行ったバイアス電圧において、計算された、もしくは使用した量であることを意味します。 補間の精度を保証するために、一般に内挿補間を行うべきであり、従って$\lambda$は0から1の範囲の値に設定するべきです。

ステップ 3の計算において、入力ファイルに次のキーワードを加えることにより補間を行います。

      NEGF.tran.interpolate         on               # default=off, on|off
      NEGF.tran.interpolate.file1  c1-negf-0.5.tranb
      NEGF.tran.interpolate.file2  c1-negf-1.0.tranb
      NEGF.tran.interpolate.coes    0.7 0.3          # default=1.0 0.0

補間を行う際には、キーワード「NEGF.tran.interpolate」を「on」に設定して下さい。 上記の例では、キーワード「NEGF.tran.interpolate.file1」と 「NEGF.tran.interpolate.file2」により指定される ファイル「cl-negf-0.5.tranb」と「cl-negf-1.0tranb」には、それぞれ0.5 Vおよび1.0 Vのバイアス電圧下での 計算結果が保存されます。 キーワード「NEGF.tran.interpolate.coes」により重み0.7と0.3が 指定されていますので、 $V=0.7\times0.5+0.3\times1.0=0.65$ [V]における透過率と電流の値が本補間法により 計算されます。

Figure 44: (a) SCF計算(実線)と補間法(点線)により計算した一次元炭素鎖の電流、 (b) SCF計算(実線)と補間法(点線)により計算した0.3Vのバイアス電圧下での一次元炭素鎖の透過率。 密度行列における非平衡成分の積分には虚数部0.01eVと格子間隔0.01eVを使用。
\includegraphics[width=17.0cm]{NEGF_int.eps}

一次元炭素鎖の電流と透過率について、完全なSCF計算と補間法の比較を図 44 (a)および(b)に示します。 補間法での計算では、0V、0.5Vおよび1.0Vの三つのバイアス電圧においてSCF計算を行い、他のバイアス電圧における結果は 補間で求めました。比較のために、補間法を用いずに完全なSCF計算から求めた電流値も示しました。 図 44から、この簡易的な補間法は、電流および透過率のどちらもにも非常に正確な結果を与えていることが確認できます。 補間の際のSCF計算で用いるバイアス電圧の適切な選択は系に依存しますが、この結果は、バイアス電圧の効果を計算精度を 保ちつつ補間するために、本方法が非常に有用であることを示唆しています。