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概要

摂動論に基づくLiechtensteinの方法 [17]を用いて局在したスピン間の交換結合パラメタ$J_{ij}$を計算できます。 この計算はポストプロセスのプログラム「jx」を用いて実行します。 OpenMX Ver 3.9において本機能はクラスタやバルク系のコリニアDFT計算のみに有効で、ノンコリニアDFT計算には一般化されていません。 本機能を用いて論文等を出版される場合は文献[18,19]を引用して頂けますと幸いです。


このプログラム「jx」は$J_{ij}$を計算する以下の三つの方法を提供します。

クラスタ系に対して、本プログラム「jx」は以下の表式に基づき原子サイト$i$$j$ の間の交換結合定数$J_{ij}$を計算します。

$\displaystyle J_{ij}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{4}
\sum_{n,n'}
\frac{-f_{n\uparrow}+f_{n'\downarrow}}{\varepsilon_{n\uparrow}-\varepsilon_{n'\downarrow}}$  
    $\displaystyle \ \times \sum_{\mu,\nu\in i}\sum_{\mu',\nu' \in j}
C_{j\mu',n\upa...
...nu\mu}
C_{i\mu,n'\downarrow}C^{*}_{j\nu',n'\downarrow}
[\hat{P}_{j}]_{\nu'\mu'}$ (3)
\begin{displaymath}
\hat{P}_{i} \equiv \hat{H}_{i\uparrow} -\hat{H}_{i\downarrow},
\end{displaymath} (4)

$\varepsilon_{n\sigma}$ $\mathbf{C}_{n\sigma}$ はKohn-Sham方程式の固有値と固有ベクトルです。 ここで、波数$\mathbf{k}$、バンドインデックス$n$ 、 スピンインデックス$\sigma$ となります。 また、 $[\hat{P}_{i}]_{\nu\mu}$ $[\hat{P}_{j}]_{\nu'\mu'}$ は サイト $i$$j$のポテンシャル差演算子の部分行列をそれぞれ表します。


バルク系に対して、本プログラム「jx」は以下の表式に基づきセル $\mathbf{0}$$\mathbf{R}$ にそれぞれ 位置する原子サイト $i$$j$の間の交換結合定数 $J_{i\mathbf{0},j\mathbf{R}}$を計算します。

$\displaystyle J_{i\mathbf{0},j\mathbf{R}}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{2}
\sum_{p=1}^{N_{\mathrm{P}}}\tilde{R}_{p}\sum_{\mu,\nu...
...j}]_{\nu'\mu'}
G^{+}_{j\mu',i\nu}(\uparrow,\tilde{z}_{p},-\mathbf{R})
\right\}.$ (5)
$\tilde{z}_{p}$$\tilde{R}_{p}$ は近似されたフェルミ関数の極(複素平面の上側に位置する)と対応する留数です [74]。 $i$$j$ は単位胞での原子のインデックスです。 $\mathbf{R}$は原子$j$が位置するセルのインデックスです。 グリーン関数 $G^{+}_{j\mu',i\nu}(\uparrow,\varepsilon,-\mathbf{R})$ $G^{+}_{i\mu,j\nu'}(\downarrow,\varepsilon,\mathbf{R}) $ は以下の式で定義されます。
$\displaystyle G^{+}_{j\mu',i\nu}(\uparrow,\varepsilon,-\mathbf{R})$ $\textstyle \equiv$ $\displaystyle \int d^3\left(\frac{ka}{2\pi}\right)e^{i\mathbf{k}\cdot\mathbf{R}...
...n\uparrow}(\mathbf{k})}
{\varepsilon+i\eta-\varepsilon_{n\uparrow}(\mathbf{k})}$ (6)
$\displaystyle G^{+}_{i\mu,j\nu'}(\downarrow,\varepsilon,\mathbf{R})$ $\textstyle \equiv$ $\displaystyle \int d^3\left(\frac{ka}{2\pi}\right)e^{-i\mathbf{k}\cdot\mathbf{R...
...arrow}(\mathbf{k})}
{\varepsilon+i\eta-\varepsilon_{n'\downarrow}(\mathbf{k})}.$ (7)

交換結合$J_{ij}$$\mathbf{R}$に渡る総和を考慮する場合には以下の表式を用いて計算することもできます。

$\displaystyle J_{ij}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \sum_{\mathbf{R}}J_{i\mathbf{0},j\mathbf{R}}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{1}{4}\int d^3\left(\frac{ka}{2\pi}\right)
\sum_{n,n'}
\frac...
...})}{\varepsilon_{n\uparrow}(\mathbf{k})-\varepsilon_{n'\downarrow}(\mathbf{k})}$  
    $\displaystyle \ \times \sum_{\mu,\nu\in i}\sum_{\mu',\nu' \in j}
C_{j\mu',n\upa...
...ow}(\mathbf{k})C^{*}_{j\nu',n'\downarrow}(\mathbf{k})
[\hat{P}_{j}]_{\nu'\mu'}.$ (8)

式(3), (5), (8)の詳細は 文献 [18,19]を参照してください。 式 (5)と(8)の取扱いの相違は図 37に模式的に示されています。 図 37 (a)は 式 (5)に相当する独立サイト間での相互作用の模式図です。 一方、式 (8)に相当する周期イメージ間での相互作用は図 37 (b)に 模式的に示されています。 後節で説明されるように、実行時にオプションFlag.PeriodicSumを指定することでどちらかの計算が選択できます。


Figure 37: 独立なサイト間と周期的なイメージ間での交換結合定数の模式図。
\includegraphics[width=16cm]{jx_schematics.eps}


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