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計算例

炭素原子の計算を例として、擬ポテンシャルの作成について説明します。 入力ファイル「C.inp」中で、キーワード「calc.type」を「VPS」に設定して、次のようにadapackを実行して下さい。

     % adpack C.inp
  
計算が正常に終了すると、「work」ディレクトリに次の8個のファイルが新しく作成されます。
   C0.nsvps        non-separable pseudopotentials
   C0.vps          input file, results of the SCF calculation, and pseudopotentials
                   in the KB or Blochl separable form,
                   and partial core density for PCC
   C0.vpao         radial parts of pseudo-atomic orbitals for pseudopotentials
   C0.vden         valence electron density, the total electron density,
                   core electron density,
                   modified core electron density for PCC
   C0.loc          local part of pseudopotentials
   C0.ld0          logarithmic derivatives of wave functions(l=0).
   C0.ld1          logarithmic derivatives of wave functions(l=1).
   C0.ld2          logarithmic derivatives of wave functions(l=2).

それぞれのファイルの内容は以下の通りです。

C0.nsvps
非分離型の擬ポテンシャルはファイル「C0.nsvps」に出力されます。 ファイル中ではlog (r)、r、擬ポテンシャル 0、擬ポテンシャル 1、...の順番で保存されています。 ここで、擬ポテンシャルを特定するために付けられた数字は、入力ファイル中でキーワード「pseudo.NandL」を設定した際に、 最初の列に記載された数字に対応しています。使用された単位はすべて原子単位 (a.u.)です。 「C0.nsvps」に保存されている炭素原子の擬ポテンシャルを図2(a)に示します。

C0.vps
分離型の擬ポテンシャルはファイル「C0.vps」に出力されます。 ファイル中ではlog (r)、r、擬ポテンシャルの局所部分、擬ポテンシャルの非局所部分、...の順番で保存されています。 また備忘録として、入力ファイルとSCF計算の結果がファイル「C0.vps」中に付け加えられています。 本ファイルはOpenMXの入力データとして使用可能です。一般にOpenMXにおける擬ポテンシャルのフォーマットは ファイル「*.vps」の形式で与えられたものとなります。 図2(b)に、炭素原子の分離型擬ポテンシャルを示します。 キーワード「charge.pcc.calc」が「ON」に設定されている場合には、このファイルには部分内殻補正 [14]のための 部分内殻密度も保存されています。フォーマットは擬ポテンシャルと同様でlog (r)、r、部分内殻密度の順番で保存されています。 部分内殻密度のデータもまたOpenMXの入力データとして使用されるものです。 図3にファイル「C0.vden」に保存された価電子密度と共に、部分内殻密度を示します。

C0.vpao
擬ポテンシャルに対応する擬原子軌道は、ファイル「C0.vpao」に出力されます。この出力フォーマットは、「C0.nsvps」の形式と同じです。 図2(a)に、擬原子軌道と擬ポテンシャルを示します。

C0.vden
価電子の電子密度はファイル「C0.vden」に保存されます。 キーワード「charg.pcc.calc」が「OFF」に設定されている場合、データは次の順番で保存されています。
log(r), r, $\rho_{\rm v}$, $\rho_{\rm t}$, $\rho_{\rm c}$, $4\pi r^2\rho_{\rm v}$, $4\pi r^2\rho_{\rm t}$, $4\pi r^2\rho_{\rm c}$.
キーワード「charg.pcc.calc」が「ON」に設定されている場合、データは次の順番で保存されています。
log(r), r, $\rho_{\rm v}$, $\rho_{\rm t}$, $\rho_{\rm c}$, $\rho_{\rm pcc}$ $4\pi r^2\rho_{\rm v}$, $4\pi r^2\rho_{\rm t}$, $4\pi r^2\rho_{\rm c}$, $4\pi r^2\rho_{\rm pcc}$.
ここで、
$\rho_{\rm v}$: 価電子密度
$\rho_{\rm t}$: 全電子密度
$\rho_{\rm c}$: 内殻電子密度
$\rho_{\rm pcc}$: 部分内殻電子密度

C0.loc
分離型擬ポテンシャルの局所部分はlog (r)、r、局所擬ポテンシャルの順序でファイル「C0.loc」に出力されます。 図2(b)に、擬ポテンシャルの局所部分を示します。

C0.ld*
動径波動関数の対数微分のデータは、ファイル「C0.ld*」に出力されます。ここで、「*」は軌道角運動量量子数を表します。 エネルギー、全電子ポテンシャル下における動径波動関数の対数微分、半局所的擬ポテンシャル、 完全分離型擬ポテンシャルの順番で保存されています。

擬ポテンシャルの作成では、BHS型 [5]、TM型 [4]、MBK型 [6]のいずれかを選択することができます。 計算例に使用したファイル「C.inp」では、TM型が選択されています。 擬ポテンシャルの適切なカットオフ半径の選択は、作成する擬ポテンシャルが滑らかになるように、試行錯誤が必要となります。 また作成した擬ポテンシャルを使用して分子や固体のDFT計算を実行する際、参照となる物理量について全電子計算の結果が 再現されるかどうかを注意深くチェックしなければなりません。これに加えて、擬ポテンシャル作成時の価電子を適切に選択するためには、 一連のベンチマーク計算を実行して確認する必要があります。


Figure 2: (a) ノルム保存型擬ポテンシャルとそれに対応する擬原子軌道の動径関数。 (b) 分離型のノルム保存型擬ポテンシャル
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\epsfig{file=fig2.eps,width=15cm}
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Figure 3: 炭素原子の価電子密度と部分内殻密度。
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\epsfig{file=fig3.eps,width=10cm}
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t-ozaki 2014-01-09