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ノンコリニアDFT

OpenMXではノンコリニアDFT法が利用可能です。 各実空間グリッド上での量子化軸に制限を持たない最も一般的な方法が実装されています。 またスピン軌道相互作用 [6,7,8,9,13]も自己無撞着計算において取り入れることが可能です。 ノンコリニアDFT計算を実行する場合、キーワード「scf.SpinPolarization」を以下のように設定して下さい。

   scf.SpinPolarization        NC        # On|Off|NC
この場合、Kohn-Sham軌道は二成分スピノルによって表現されます。 それぞれのサイトの初期スピンの方位は次のように与えられます。
  <Atoms.SpeciesAndCoordinates           # Unit=Ang
    1  Mn    0.00000   0.00000   0.00000   8.0  5.0  45.0 0.0 45.0 0.0  1 on
    2  O     1.70000   0.00000   0.00000   3.0  3.0  45.0 0.0 45.0 0.0  1 on
  Atoms.SpeciesAndCoordinates>
   1:    原子の通し番号
   2:    原子種の名前
   3:    x-座標
   4:    y-座標
   5:    z-座標
   6:    upスピン状態に対する初期占有数
   7:    downスピン状態に対する初期占有数 
   8:    スピン磁気モーメントに対する局所磁場のEuler角: theta
   9:    スピン磁気モーメントに対する局所磁場のEuler角: phi
         8と9番目のEuler角は初期スピン密度の生成にも使用
  10:    軌道磁気モーメントに対する局所磁場のEuler角: theta 
  11:    軌道磁気モーメントに対する局所磁場のEuler角: phi
  12:    次のいずれかのキーワード「scf.Constraint.NC.Spin」、「scf.NC.Zeeman.Orbital」、
         もしくは「scf.NC.Zeeman.Orbital」が指定された際に、それぞれの原子に対して
         制約法を適用する場合には「1」、適用しない場合には「0」。
  13:    LDA(GGA)+U法の際に、軌道分極を促進する場合には「on」、通常計算の場合には「off」。
スピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの方位に対する初期Euler角 ($\theta$$\phi$)はそれぞれ8番目、 9番目および10番目、11番目の列で与えられます。 12番目の列は制約法のスイッチで、それぞれの原子サイトにスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの方位に対する 制約汎関数を付加します。ここで、「1」は制約汎関数を付加、「0」は制約法無しを意味します。 スピン磁気モーメントの方位に制約条件を付加するDFT計算の詳細については「スピン磁気モーメント方位の制約DFT」のセクションを参照して下さい。 最後の13番目の列はLDA(GGA)+U法の際に、軌道分極を促進する手法に対するスイッチで、 軌道分極を促進する場合には「on」、通常計算の場合には「off」となります。 図25はノンコリニアDFT法で計算したMnO分子中のスピン磁気モーメントをベクトル表示したものです。 この計算は、「work」ディレクトリ内の入力ファイル「Mol_MnO_NC.dat」を使って、再現することができます。 実空間でノンコリニアな方位を持つスピン磁気モーメントを可視化するために、次の二つのファイルが利用できます。
   *.nc.xsf
   *.ncsden.xsf
ここで、*はユーザーが指定した「System.Name」です。 「*.nc.xsf」と「*.ncsden.xsf」はXCrySDenでサポートされているベクトルファイルフォーマット(XSF)形式の ファイルです。前者がMulliken解析によってそれぞれの原子に対して射影されたスピン磁気モーメントを、後者が 実空間グリッド上のスピン磁気モーメントになります。 この二つのファイルは、図25に示すようにXCrySDenの「Display $\to$ Forces」を使って可視化できます。

Mulliken解析で計算されるそれぞれの原子のスピン磁気モーメントとそのEuler角は、ファイル「*.out」内に次のように 保存されています。

***********************************************************
***********************************************************
                   Mulliken populations
***********************************************************
***********************************************************

   Total spin moment (muB)   4.998503442   Angles (Deg) 44.991211196   0.000000000

               Up       Down      Sum      Diff        theta      phi
    1   Mn   9.59803  4.76902  14.36705   4.82901    44.99208    0.00000
    2    O   3.40122  3.23173   6.63295   0.16949    44.96650   -0.00000
一般にノンコリニアDFT法おけるSCF計算はコリニア計算と比較して、収束が容易ではありません。 これはスピン方位の変化に伴うエネルギーの変化が非常に小さいためです。 スピン磁気モーメントや軌道磁気モーメントの方位に制約条件を課す制約法はSCF計算の収束の加速に 有効に働くことがあります。  ノンコリニアDFT法では、スピン軌道相互作用がサポートされていますが、コリニアDFT法ではサポートされていません。 スピン軌道相互作用に関しては「相対論的効果」の章を参照して下さい。

Figure 25: ノンコリニアDFT法で計算したMnO分子中のスピン磁気モーメント。 (a) Mulliken解析によってそれぞれの原子に対して射影されたスピン磁気モーメント。 (b) 実空間グリッド上のスピン磁気モーメント。 図はXCrySDenの「Display $\to$ Forces」により可視化。 入力ファイルは「work」ディレクトリ内の「Mol_MnO_NC.dat」。
\begin{figure}\begin{center}
\epsfig{file=NonCol.eps,width=12.0cm}
\end{center}
\end{figure}



t-ozaki 2013-12-23